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CG合成画像に対する実験と評価

 

CG合成画像に対する実験では,女性人体を対象とした.まず,姿勢推定処理に 用いる女性人体モデルを利用してシルエット画像をCGで219枚合成する.関節 角度は20度刻みでランダムに発生させた.これらの画像それぞれに対して, 根ノードの関節接続点の位置が既知であるとして本方法を適用した.画像の大 きさは縦横とも700画素である.カメラ条件としては並行投影を仮定し,実 世界の1cm画素分の長さに相当するものとする.

実験に用いた女性人体モデルの関節角度の可動範囲を表2に 示す.図6はすべての関節角度が0度である時のモデ ルの姿勢を示す.各ノードのローカル座標軸はすべて,画像平面内にモデルを カメラに対して図6のように直立させたときの水平方向 をX軸,垂直方向をY軸,カメラ方向をZ軸としている.各ノードの各軸の表記 の順は上から下へそのまま回転の順番を示す.また,根ノードには頭部が相当 する.これは,本実験のように人体が自由な姿勢をとる場合,位置の抽出は頭 部が一番行いやすいのではないかと考えたからである.

  
図 6: 直立したモデルと座標軸との関係

姿勢推定処理を行うにあたって,本実験では関節角度候補の生成のためのサン プリング間隔を20度に設定した.また,ノード一つについて生成される関節 角度候補を最大5個に制限する.すなわち,関節角度候補の評価において,評 価値の上位5候補のみでリストを作成する.

CG合成画像で実験を行う場合,形状誤差限界面積をr=0とすれば各ノードの 投影領域が完全にシルエット領域に包含されることになるので,姿勢推定の結 果がよくなることが予想される.しかし,これは対象物体とモデルとが全く等 しい幾何形状を持つという仮定をおいているのと同じである.実際には,モデ ルに対象物体と完全に等しい幾何形状を与えることはほぼ不可能であるから, この仮定は現実的ではない.そこで,今回の実験では形状誤差限界面積r200画素に定めた.これはカメラ条件から換算するとで,ノードの 平均投影面積の約に相当する.

本研究では,姿勢推定をを最小にすることで行って いる.ここでは,各姿勢によるの大きさの違いを正規化して評価するた め,式(9)で定義されるを用いる.

 

219例の平均評価値はであった.Sとの完全一致は135例であった.これは,全例のにおいて本方 法がを満たす姿勢を求めたことを意味する.この うち,101例についてはすべての関節角度が一致した.図7に その数例を挙げる.表示は濃淡画像であるが,姿勢推定処理時にはシルエット 画像がシステムに入力されている.図を見ても分かるように,これらはあまり 隠蔽等が生じていない姿勢である.一方,残りの34例についてはSPと が一致しているにも関わらず,姿勢が一致しない.これは,4 章でも述べたように,を満たす姿勢が必ずしも一意 ではないからである.具体的には,これには二つの原因がある.

  
図 7: 姿勢一致した成功例

一つは隠蔽であり,これは単眼視画像を用いている限り解決されない.このよ うな例が14例存在した.図8に二例挙げる.上段が原画像 であり,中段は元の姿勢を横から観測した画像,下段は推定結果を横から観測 した画像である.

  
図 8: 隠蔽下でのシルエット一致例

もう一つの原因はシルエット画像を用いたことによるエッジ情報の欠如であ る.これは22例見られた.図9に例示するが,左が元の姿 勢,右が推定結果である.シルエット領域内のエッジ情報を用いれば,これら の例は正確な姿勢推定が可能になるものと思われる.

  
図 9: エッジ情報欠如下でのシルエット一致例

これらの原因に基づく姿勢の一致しない推定結果の場合,いくつかのノードで は比較的高い評価値を持つ関節角度候補が未採用の まま残されている.そこで,本方法の後処理としてエッジ情報や他の視点方向 からの観測情報を導入すれば,それらの関節角度候補のうちから正しいものを 選択することが可能になる.このように,曖昧な姿勢に対しても本方法は容易 に対応可能である.

実験中,75例については最初に求めた姿勢推定結果より姿勢再推定処理 (5.2節)後で得た推定結果のほうがの値を改善し た.これは,姿勢再推定処理による局所的最適解の回避が行われたことを示し ている.図10に示した例では,下段の姿勢に対するシルエット が与えられた時,姿勢再推定処理前では上段のような誤った結果となったが, 姿勢再推定を行うことで元の姿勢と一致する結果に改善されている.マッチン グ処理量の観点から考察すると,平均処理ノード数すなわち処理 3. の実行回数は平均で回である.実行回数の最小は15 回であるから,マッチング処理量は最小実行回数に近い数字であることが分か る.処理ノード数の分布を図11に示す.処理ノード数の多い 上位7例を除くと,残りの平均はとなる.

  
図 10: 改善された例

  
図 11: 処理ノード数

ところで,本実験においてSPが一致しない例が存在する最大の理由は, ノード一つについて生成される関節角度候補を5つに制限していることである. 図12に一例を示す.この例では,胸部と右前腕とが接する形で 配置されているので,胸部のノードにおいて関節角度候補が多数発生し,正し い関節角度候補が上位5つに入れなかったため,シルエットの一致が得られな かった.生成される関節角度候補の生成数を増やせばシルエットが一致する率 を向上させることは可能であるが,生成数に対してマッチング処理量が指数的 に増大するため,そのトレードオフが問題となる.

  
図 12: シルエットが一致しなかった例



Yoshinari Kameda
1997年04月04日 (金) 12時06分38秒 JST